とにかく、ピザやパンを焼く機会が増えました。ピザに至っては毎週ペースで焼いていた時期もあります。こっちはキッチンにたいていオーブンがありますし、難しそうに思えるんですが意外と簡単なんです。超絶ズボラの私が続けられる程度には。いまいち膨らまないとか上手くいかないことも多いのですが、そのような失敗や原因究明など、試行錯誤のプロセスも含めて楽しめます。仕事でも発酵してますが、パン作りは全くの趣味なので仕事と違ってプレッシャーもないですしね。せっかくなので、どんな材料や方法でやっているのかをメモがてらまとめてみようかなと思います。
小麦粉(強力粉)
で、小麦粉。
コスパのいい国産強力粉はスーパーPBのvetemjöl special
スウェーデンのスーパーではパン向きの小麦粉は割と豊富に見つかります。スーパーで売ってる中でパンやピザに特に向いているのは、vetemjöl specialという種類のグルテン量が多い強力粉。特にスーパーのプライベートブランドのvetemjöl specialは基本的に国産な上にお手頃価格で重宝しますが、少しだけいいお値段のだとRamrosa kvarnのTipo 00(緑の袋)やManitoba cream(ピンクの袋)もパンやピザ向きです。ただ私は舌が肥えていないのでお値段ほどの違いは感じることができていません…。
もしスーパーで並んでいる粉がパン作りに適しているか迷ったら、成分表示のprotein量を見て100gあたり12g前後であれば大丈夫なはず。
(逆に日本で一般的な薄力粉はスウェーデンのスーパーにあるんでしょうか。パンと違ってお菓子作りには興味がなく、5年以上住んでるわりに薄力粉を積極的に探そうとしたことがないのでわかりません。)
ピザには本場イタリア産のピザ用小麦粉もあります
古くからある品種の小麦にも注目
ちなみにスウェーデン農業大学(SLU)とKristianstad大学がこのような在来種の穀物(kulturspannmål)に関する研究プロジェクトを実施中です。
Kulturspannmål - godare och nyttigare?
上の写真の左に写っているハッランド地方のLimabacka Kvarnのハッランド小麦(Halländskt Lantvete)は在来種の一例です。まだ使っていませんが、パンやピザに向いているそうなので使うのが楽しみです。ちょうど今日写真右のVetemjöl specialを使ってサワードウパンを焼きましたが、発酵している時のなんとなく香ばしさを感じさせる甘い香りがくせになりそうな良い香りでした。
下の写真に写っている小麦粉の製造元、ソルムランド地方のWarbro Kvarnはビールの原料となる大麦麦芽を製造しているつながりで知った製粉所です。外皮が少し混じっているのか、薄く茶色がかった素朴なパン用小麦粉です。この小麦粉は生地を作るときに他のものより水の比率を多くしないと生地が固めになる印象です。Warbro Kvarnは、2022年8月中旬の火災によりほとんどの製造施設が焼失してしまい公式ウェブショップの営業を休止していましたが、今はウェブショップや取扱店での販売を徐々に再開しているようです。
両社とも全ての製品がオーガニックとなっています。ネット購入可能。
パン酵母
スーパーで買ってくる場合
最も手軽なのはスーパーで生イーストかドライイーストを買ってくることです。私は生イーストを冷蔵庫に常備しています。スウェーデンのスーパーには、おそらく必ずと言っていいほど黄色いパッケージのパン酵母(イースト)が売っています。ハード系のパンやピザ生地に適しているのが青字の"för matbröd"と書いてあるタイプ、kanelbullarなど砂糖を含む生地に適しているのが赤字の"för söta degar"と書いてあるタイプのようです。てことは日本の食パンも生地に砂糖を入れるレシピが多いので多分赤字の方がいいのですかね?私は青字ので湯種食パンを作って一応それっぽくはなりましたが次は赤字の方を試してみます。
ちなみにこの市販のパン酵母は、実はビールの中でも上面発酵のエールタイプの発酵に用いられる酵母(Saccharomyces cerevisiae)と同じ仲間だったりします。
もう一つの方法は、自分で酵母を起こして育てることです。もう少し細かく分けると、レーズンやリンゴなどの果物についている酵母を育てる方法と、サワードウ(スウェーデン語surdeg、英語sourdough)といって空気中に漂う酵母や乳酸菌をつかまえて育てる方法などなどがあるみたいなのですが、私は後者のサワードウしかやったことがなく前者は聞きかじった程度なので、ここでは前者については割愛します。
ちなみに巷では「天然酵母」という言い方がよく使われてるようですが、上述の市販のパン用イースト(パン酵母)も、もとはといえば自然界に存在する酵母の中からパンを膨らませるのに適した酵母だけを取り出して売っているというだけなので、酵母そのものは人工的に作られたものではありません。そういう意味では市販であっても「天然」であることには変わりないため、サワードウやレーズン酵母だけを指して「天然酵母」という表現を使うことは私はあえて避けています。
- サワードウのスターター=小麦粉(and/orライ麦粉)と水を同量混ぜてできたペーストの中でそのへんの空気中に漂う野生酵母や乳酸菌をつかまえて育てたもの
- サワードウ=サワードウのスターターに小麦粉・水・塩などを足して混ぜて作ったパン生地
- サワードウパン=サワードウを焼いたもの
で、サワードウのパン作りで市販の酵母の代わりとなるのがこのスターター。作り方は上に書いたように空き瓶の中で小麦粉(and/orライ麦粉)と水を同量混ぜ、瓶の蓋をきっちり閉めずに載せるだけで室温のところに置き、酵母や乳酸菌のエサとして毎日粉と水を足し、量が増えて瓶におさまらなくなったりちょっと変わったにおいがしたりしたら粉と水を足す前に一部を捨てるようにする。平たく言えばこんな感じです。
なんじゃそりゃ説明になってないぞと言われそうなので、ベストセラーのサワードウパンレシピ本の筆者Martin JohanssonさんのブログのLilla surdegsskolanという記事シリーズを以下リンクで紹介します。結構詳しくて参考になります。実は彼のレシピ本Bröd bröd brödを持ってますが、シンプルなレシピが多くて作りやすいです。
Pain de Martin: Lilla surdegsskolan
あとyoutubeではスウェーデン西海岸で小さなパン屋さんを営むKenny Jakobsson さんのSurdegsgottというチャンネルが人気のようです。ここにVärldens kanske bästa surdegsskola: Starta en surdegというスターター起こしについての動画があります。私はユーチューバー的な動画は見るだけで疲れてしまうので基本的には好きではないのですが、この方のチャンネルは疲れないのでたまに見ています。コテコテな西海岸なしゃべりです。実は彼の執筆したサワードウ本Surdeg Lär dig hantverketも持ってますが、理論の話も多くて勉強になります。
Surdegsgott
サワードウのスターター、最初はそれだけで本当に上手くいくの?と半信半疑でした。確かに一発では成功しないかもしれません。私も、上の写真の泡泡状態まで持っていくのがなかなか大変でした。粉を変え季節を変え4〜5回挑戦して去年9月にやっと成功。ライ麦については詳しくないですが、スターターを起こすにはなにやらライ麦の方が成功率が高いらしいので最初だけ使い、安定して発酵するようになったら足す粉をすべて小麦粉に切り替えました。
捨てて足してを繰り返しているので、今では下の写真のようにライ麦の粒はほぼ見られなくなりました。ヨーグルトのようないい香りがします。忙しいときは冷蔵庫で長期間放置したりもしてしまいましたが、今でも小麦と水を足すと安定してぶくぶく発酵してます。