フォーリングナンバー(falltal)について
趣味でパンを焼いていると、ときどきちょっとマニアックな話題に遭遇する。たとえば今回調べてみた小麦粉のフォーリングナンバー(falltal)もそのひとつ。
- Falltalとは小麦粉の中に存在するαアミラーゼという酵素の活性を表す値で、αアミラーゼが活発なほど低く、活発でないほど高くなる。αアミラーゼなどの酵素は発芽するときに生成される。ちなみにビール醸造に使われる麦芽は、大麦を意図的に発芽させて酵素活性を上げたもの。
- スウェーデンのある小規模製粉所は小麦粉の場合は260-290のfalltalが望ましいとしている(参考:https://www.limabackakvarn.se/vanliga-fragor-om-mjol/)
- 測り方については「みんなの農業広場」というサイトに日本語でも説明がある。αアミラーゼがデンプンを糖分に分解する過程で溶液の粘度が低下することを利用した測定方法ということのようだ(参考:https://www.jeinou.com/benri/wheat/2011/01/070935.html)
- イタリアのナポリピザ用小麦粉はFalltalが400以上のことも多いが、スウェーデン産強力粉は同300程度。つまり前者のほうがαアミラーゼが活発ではない。そのため前者はデンプン→糖分の分解(糖化, saccharification)作用が後者よりゆっくり進む。後者は生地中に糖分が増えて高温のピザ窯で焼くときに焦げやすくなるなどするため発酵時間を短めにとる(参考:https://shop.lillanapoli.se/pages/nordmjol)
- 温暖で乾燥した気候で栽培された場合はfalltalが400以上になることもある。高すぎるFalltalを下げる(酵素の活動を増やす)ために麦芽を添加する手法もある(参考:När och hur justerar du falltalet https://www.eldrimner.com/core/files/När%20och%20hur%20justerar%20du%20falltalet-%20TM%201%202021.pdf)
Falltalに関する考察
以下は勝手な考察なので間違ってるかもしれない。
私の焼くサワードウブレッドが広がりがちなのには前の記事でも考察したように過発酵などいろいろ理由があると考えられるが、よく使っているスウェーデン産小麦粉のfalltalがイタリア産ピザ用小麦粉と比べて低めなことももしかしたら関係しているかもと上の情報を見て思った。上のナポリピザの話にも出てくるが、理論的にはαアミラーゼが糖分を生み出せば生み出すほど酵母の餌は増えて発酵が促進されるため、他が同じ条件だとfalltalが低いほど発酵がより早く進むことになる。発酵時間や温度など条件を完全に揃えて同時比較したわけではないので感覚的な違いだが、サワードウブレッドを焼いたとき、同じくらいの水分量でスウェーデン産の強力粉をbasmjölをした場合とナポリピザ用粉をbasmjölとした場合、イタリア産を使った時の方が生地は広がらなかったけどなんとなく焼き上がりのクラムの食感がドライな感じがしたのは、単に乾燥しただけかもしれないが、もしかしたらfalltalの違いのせいもあるかもしれない。比較検証が必要。
なお糖分は酵母の餌になるが、αアミラーゼはβアミラーゼほど細かくデンプンを分解しないので、αアミラーゼの活動により主に作り出されるデキストリンは非発酵性。そのためこれら非発酵性糖分は発酵終了後も生地に残り、パンに甘味を与えたり焼き色に影響したりするということなのかな?小麦粉の中にはβアミラーゼも存在するはずだからマルトースなどの発酵性糖分ももちろん生み出され、ゆえに砂糖を入れない生地でも発酵するという理解でよいのかな(醸造課程で勉強した内容をもとにした私の勝手な理解)