最初の1ヶ月は、基本的なビール製造プロセスを学ぶコースでした。講師は実際に醸造所で働く人で、内容も実践的です。私はこれまでビールを飲む側で、製造法についてもなんとなく知っている程度だったので、集中講義の最初の方は新しい情報がどんどん入ってきてついていくのがやっと。講義中にとったノートを家に帰ってから教科書やウェブの情報などを加えつつPC上でまとめ直して勉強し、レポート課題やセミナーをなんとかクリアすることができました。
勉強の過程で気づいたのは、ビールの製造法に関する日本語の詳しい情報がウェブ上ではとても限られていることです。私が探し足りないのもあると思いますが、見つけられた中で詳しいサイトはビアトレさんなど数サイト。一方で、スウェーデン語や英語ではかなり豊富な情報が得られます。
これは、日本で自家醸造が認められていないことと大きく関係していると思います。他の国については詳しく知りませんが、少なくとも米国やスウェーデンでは自家消費目的での醸造が認められており、道具と材料さえ揃えれば家のキッチンとかでワインやビールを作れます。そのため、自家醸造をする人のコミュニティがとても充実しているのです。例えばBrewer's friendというポータルサイトではフォーラム・原材料やレシピの検索・計算ツールなど自宅醸造愛好者にとって役立つ情報がまとまっているし、個人向けにビール作りの材料や道具を販売するお店も充実しているし、個人サイト・ブログ・Youtubeなどでビール醸造の経験を発信している人も数多いです。私は以前ワインを自宅で醸造しましたし、今通っているプログラムの学生も、自宅や仕事でビールを醸造した経験のある人が半数程度を占めています。
一方、酒造免許の条件が厳しく、免許なしではアルコール分1%を超える酒類の製造が認められてない日本では、ビールを「飲む」文化は広がっているものの、趣味としてのビールを「作る」文化は現状のままではあまり発展の余地がないように思います。私がまだ日本に住んでいた2015年頃は日本でもずいぶんクラフトビール人気が高まってきていた時期で、おそらく「自分でクラフトビールを作ってみたい」と思う人も増えたのではないかと思います(私もそう夢見ていた人間の一人でした)。でも個人が家で気軽にビール作りをするには依然としてハードルが高い。そのような状況では当然ビール作りに関する情報交換コミュニティも発展しにくいですよね。