ちょうど1年ほど前、上述のSkavlanというSvtのトーク番組で、感情的にならず示唆に富んだ表現で静かに自身の経験を語る彼女を初めて見て、90歳を超えてなお精力的に活動している姿にとても強い印象を受けたのを覚えています。以来、メディアで彼女のコメントや意見記事を見つけたら目を通すようになりました(妊娠中や産後はあまり追えていませんでしたが…)。
冒頭の写真に写っている本"Frågor jag fått om Förintelsen(ホロコーストについて私が受けた質問)"は、バス待ちの間にベビーカーを押してなんとなく入った図書館で見つけて借りました。まえがきでは、悲惨な歴史を繰り返さないため、ホロコーストについてよく知らない若い世代にも何が起こったかを伝えることの重要性が強調されています。内容は、タイトルの通り、例えば「第二次大戦前の生活はどのようなものでしたか?」「どうやって生き延びることができたのですか?」「収容所で生理がきたらどうしていましたか?」「自分はスウェーデン人だと感じますか?」「現代の難民を見て過去の自分を思い出すことはありますか?」など、学校での講演活動で生徒から受けた率直な質問の数々に答える形式となっています。もちろん語られる内容のほとんどは重苦しく、読んでいて辛くなる部分も多いものの、一つ一つの章が短く、平易で淡々としたスウェーデン語で書かれているので読み進めやすいです。
なお、有料購読者向けの記事ですが、質問と彼女の回答の一部をDagens Nyheter紙のウェブサイトで読むことができます。
Hédi Fried: De som är borta kommer aldrig igen. I dag är det framtiden som gäller
特定の民族・宗教を名指しして排斥するような発言がそこかしこから聞こえるようになった昨今、歴史を繰り返さないために一人一人何ができるのか。もちろん自分も考えなければならないし、将来的には自分の子どもに考えることを促す責任も負っているんだなと改めて思います。偶然手に取った一冊でまだ読んでいる最中なのですが、育児に追われて過ぎていく日々の中に少しの思索の時間をもたらしてくれます。
なお、彼女について知るなら、以下のような音声や映像も役立ちます。
・Hédi Fried 8 juli 2015 kl 13:00 - Sommar & Vinter i P1 | Sveriges Radio:2015年にスウェーデンラジオの有名番組Sommarに出演した際の音源。
・Hédi Fried: Min oro:2017年のスウェーデンテレビSvtによるドキュメンタリー。
・Hédi Fried:彼女のYoutubeチャンネル。