Utmaningarna för SFI(SvDの特集ページ)
SvDがこれだけの紙面を割いて取り上げるということは、それだけ問題が大きくなってきているのだと思います。私が特に関心を持っているのは、授業の質と教師不足についてです。内容をかなりかいつまんでまとめると、SvDの記事では主に以下のようなことが議論されています。かなりざっくりとしたまとめなので、気になる方は原文をご参照ください。
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大手成人向け教育企業の幹部へのインタビューを交えた記事。特にストックホルムなど大都市では、コミューン(自治体)の委託を受けた企業のSFI参入が増えているものの、スウェーデン全体で見れば、SFIの生徒の7割近くはコミューンが直接運営する学校に通っている。
昨今の難民増加を受けてSFIへの需要が高まっており、企業側も、まだ民間委託を導入していないコミューンに対し、参入を受け入れるよう求めている。
教室で授業を行うことが多いSFIは、通信コースのあるKomvuxよりも利益が少ないが、民間企業側は、より収益の大きいKomvuxの生徒獲得も期待しつつSFIに投資している。(”Kommuner måste öppna för privat SFI”、4/12経済面) - SFIやKomvuxを開講する成人向け教育企業・団体10社に対して学校査察局(Skolinspektionen)が行った調査で、10社中8社(リンク先の表では9社中7社のような…)で学生の成績評価などが不十分だったという結果が出た。民間企業運営の学校でかつて勤務していた教師の「会ったこともない生徒の成績評価をさせられた」「利益追求の姿勢にうんざりした」などのコメントが紹介されている。この調査の全文は4月末に発表予定。(Privata SFI-företag får bakläxa av Skolinspektionen、4/18経済面)
→2016.5.16追記:Skolinspektionenのページに調査が公表されていました。 - 全国教師組合(Lärare Riksförbund)の組合長へのインタビュー記事。教師も、利益追求型で労働環境も悪い企業運営の学校よりも、コミューンが運営する学校で働きたいと思う人が多い。SFIをはじめとした成人教育の民間委託が進めば、教師の業界離れが進み、教師不足がより深刻になる可能性があると指摘。現在のようにコミューンが決めるのではなく、国(=Skolinspektionen)または少なくとも地方が、成人教育機関の認可を行うべきと主張している。(Upphandlingarna leder till risk för lärarflyktおよびLärare riskerar att fly när SFI upphandlas、4/13と4/19経済面)
私自身はSFIに通ったことがないのでSFIの現状については分かりませんが、今通っているSAS(Svenska som andraspråk)というコースの学校でも、記事で触れられているような問題がまさに起こっています。以降は、私の最近の経験をまじえた話です。
私が今通っているKomvuxのSASのコースは、まさにその「営利企業が運営する学校」にあたります。他社も含めていろいろ良くない話も聞いていたので、覚悟して通い始めたのですが…。
このクラス、先月に通い始めてから今までの間に、先生が3〜4回代わりました。一人目の先生は教え方も上手でユーモアもあってとても良かったんですが、企業運営ではない学校に転職するということで授業開始から2週間ほどで辞めてしまいました。途中から並行して授業を担当していたもう一人の先生も、いつの間にかいなくなってました。次に来た先生が正式に担任になるのかと思いきや、2週間だけの期間限定雇用ということですぐに退職してしまいました。
その後代替要員が採用されている様子もなく、今は、4月スタートのクラスのメンバーと同じ教室で、前に聞いた講義をまた聞かされたり、ほぼ自習のみで授業時間を過ごす羽目になったりしています。一人の先生がふたつのクラスを掛け持ちしていて、時間になっても先生がなかなか現れないこともあるし、週間予定表も週半ばの水曜日になってようやく出てくる状況です。しかも、その都度配られる配布物を使いながら進めていく形なので、せっかく買った高いテキストブックもまだほとんど使っていません。今週は、クラスメイトと愚痴をこぼし合って会話のトレーニングをしてます(笑)
私の運が悪すぎる(良すぎる?)のかもしれませんが、まさに、記事にあるような人材流出と質の低下の様子をリアルタイムで経験している感じです。こんな有様なので、さすがにここで続けるのは嫌だと思い、コミューンの担当者に現状を伝えて相談しています。今のコースはあと少しで終わるので、最後まで受けて成績評価をもらって、次のコースからは学校を変えるつもりです。
一連の流れの中での現場での混乱ぶりを見ていると、先生自身に非があるというよりは、適切な採用と人員配置ができていない雇用者(企業)側に問題があると強く感じます。企業として利益を追求するあまり、現場が疲弊してしまうという、よくある構造的問題のひとつなのだと思います。
もちろん、「民間企業のコースだから悪い」とひとくくりにしたいわけではなく、また企業が利益を追求すること自体を否定するつもりはありません。ただ、税金を注ぎ込まれて教育を行う以上、どこが運営するのであれ、少なくとも最低限の質は確保してほしいです(私も、税金で教育を受ける立場として、できるだけ短期間で多くを身につけたいと思って勉強しているので…)。
最低限の授業の質を確保できていない学校に対し、コミューンが何らかのペナルティを与えるようなしくみはあるのでしょうか(委託取り消しとか)。でも、学校数が限られている一方で生徒数は増え続けているので、コミューンとしても質の悪い学校を切りにくい構図がありそうですね。今後も引き続き調べてみたいテーマです。
【追記】
2016年7月に続編を書きましたので、よろしければご参照ください。
Komvuxのスウェーデン語コースSVA(SAS):学校の選び方など
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