実はこのvörtbröd、ビールともちょっと関係があります。パンの名前を直訳すると「麦汁パン」。つまりこのパン、ビールのもととなる発酵前の甘い液体=麦汁を使って作られています。茶色は麦汁の色なのです。大手の製法はよく知りませんが、小規模なパン屋さんはflytande vört/bakvört/bagerivört/maltextraktとよばれる液体状の濃縮麦汁を使ったり、近隣の小規模醸造所から麦汁を分けてもらったりするようです。私の働く醸造所や過去にインターンをしていた醸造所も、vörtbrödの季節になると近くのパン屋さんに麦汁を提供していました。
このときはせっかくなので家にあった賞味期限切れの麦芽(malt)を活用し麦汁から自作しました。以下は麦汁を作っている時の写真です。麦芽とお湯の混合物(mäsk)を炊飯器で60-70°Cくらいに保温し糖化(mäskning)しているところです。40-60分くらい保温して麦芽かすを取り除いて液体部分を鍋で煮ると麦汁の完成です。これにホップとイーストを入れて発酵させるとビールになりますがこのときは全部パンに使いました。ちなみに麦芽はホームブルーイング専門店(hembryggarbutik)で買えます。
麦芽かすを取り除きやすいよう、写真のように目の細かいメッシュの野菜袋を炊飯釜にかぶせ、巨大ティーバッグのように使っています。自宅で醸造をする人の間で一般的な「BIAB(Brew in a bag)」という手法をスケールダウンして手持ちの道具でやってみたらこんな感じになりました。
bagerivörtが手に入らない場合は、スタウトやポーターなどの黒ビール、svagdricka、julmust、粉状のvörtmix、brödsirapなどを使うレシピもネット上にあるようです。