私はここの商品をある時期から買わないようにしています。その理由は、一言でいえばこの企業のバックにいる団体の理念や思想に賛同しかねるためです。より詳しい理由は続きに書こうと思います。
詳しく書く前にことわっておきますが、この企業の商品が好きで買っている方を批判する意図は私には決してありませんし、他の方に買うのをやめた方がいいと呼びかけるつもりもありません。
ただ、この企業の背景にいる団体についての既存の日本語の情報はほとんどなく、単に「オーガニックだから」「パッケージデザインが素敵だから」などのポジティブな側面だけで商品が紹介されていたり購入されたりしていることが多いので、表面的なものだけでない背景がもっと広く知られ、購入を決める際の判断材料となった方がいいなとも考えています。
Järnaという街について
わかりやすい例が、この地区にはワクチンに対して懐疑的な人(最近よく使われる言葉で言い換えれば「反ワクチン論者」)が他よりも多いことです。Covid-19のワクチン接種率がとりわけ低い地区を取り上げた大手紙DNの記事で、外国のバックグラウンドを持つ人々が多い地区とは別の理由があるとしてJärnaが取り上げられています。
参考:Vaccinationens vita fläckar – här nobbar unga sprutan|Dagens Nyheter, 2021-09-09
また、麻疹(はしか)をJärnaの反ワクチン思想を持つ人々が意図的に感染拡大させていたことが2021年に公共放送スウェーデンラジオのドキュメンタリーで取り上げられました。
参考:Mässlingsutbrotten i Järna|Sveriges Radio P3 Dokumentär, 2021-10-31
Saltå kvarnに出資する財団
Saltå kvarnは、1964年にパン屋さんとして創業しました。もともとは精神的に障害のある若者たちをシュタイナーの思想に基づいて教育する学校兼住居だったということで、そこでバイオダイナミック農法により栽培した穀物を使ってパンを製造していたところ、それが評判となり開業に至ったのが始まりということです(参考:Vår historia|Saltå kvarn)。
現在Saltå kvarnは株式会社でなおかつSteneken Holdings ABという持ち株会社の子会社となっており、そのStenekenの株式を所有するのがVidarstiftelsenという各種antroposofisk活動を支援する財団です。つまりSaltå kvarnは、大雑把にいうとVidarstiftelsenという財団の傘下にあることになります(参考:Antroposofernas miljonstiftelse gav stöd till kritiserade Solvikskolan|Dagens Nyheter, 2021-06-15)。裏を返せば、Saltå kvarnの商品を買うことはVidarstiftelsenの活動を間接的に支援することにもつながるわけです。
このVidarstiftelsenは、すぐ上のDNの記事にもあるように公共放送SVTのドキュメンタリーで告発的に取り上げられ批判を受けたシュタイナー教育を行う学校を支援していたことが明らかになっています。
そのほか、過去にVidarklinikenというクリニックも運営していました。このクリニックは上のラジオの麻疹のドキュメンタリーにも出てきていて、「麻疹に感染した子供の親に対して、子供の発疹をさすって全身に広げるようアドバイスした」とか書いてあってここからもその常軌を逸した感が多くの方には伝わると思います。このクリニックは、2016年にストックホルム県から医療機関としての契約を切られ、2019年に閉鎖されました。
このような団体がSaltå kvarnのägare(株主)なのです。
最後に
といっても最初に書いたように、私はここの商品を買わないよう呼びかけたいわけではありませんし、この企業を殊更攻撃したいわけではありません。障害のある若者を支援するという設立目的自体は立派ですし、大きな企業ですからそこで働く人全員がそのような思想を持っているわけではないとは思いますし。他にもここほど有名でない企業で似たような背景を持つところもあるかもしれませんし(2023.11追記: 最近気づきましたがユールゴーデンのRosendals trädgårdもバイオダイナミック農法を標榜していますね)。これを読んで敢えて購入するようになる人がいたとしても、逆にショックを受けて買わなくなる人がいても、それはその人の選択です。
いずれにせよ、多くの人がスーパーで目にするこのような有名ブランドの背景情報を知ることは、消費者として購入選択をする際の有効な判断材料になると思います(なおスウェーデン語で情報を探すと、何年も前から実際にボイコットを呼びかけたり避けたりしている人もいることがわかります)。私も以前知らなかった頃は特に気にせず買っていてこのブログに書いたこともあった気がしますが、上に書いたような背景を知って自分の考えと相容れない思想により運営されているとわかってからは買わなくなりました。まだ家には何年も前に買った小豆とかが残ってますけどね。