今回、YH出願を通じていろいろ調べる中で、プログラムの多様性の面のみならず入学者選抜の面でも興味深い教育制度だなと思ったので、YHの特徴についてざっと書きます。
YHとはその名のとおり職業訓練に特化した学校で、スウェーデン各地にあり、提供プログラムの分野も様々です(YHプログラム検索ページ:Yrkeshögskolan.se)。各プログラムの長さは1.5年〜2年が多い模様で、私の通うプログラムは3学期1.5年。入学のためには高卒資格またはそれに相当する資格が必要で、プログラムによっては、追加で語学やそのほか授業内容に関連する科目の事前知識を求めている場合もあります。たとえばIT系のYHプログラムでは、スウェーデン語や英語の他に、数学やプログラミング基礎科目の受講経験を求めてたりします。
YHの大きな特徴は、産業界(企業)がカリキュラム計画と教育に深く関わっていること。基本的に業界で人材のニーズがあるプログラムしか開講されないし、カリキュラムも実践的なうえ、プログラムの中に必ず企業でのインターンシップ(LIA, Lärande i arbete。Praktikともいう)が含まれているので、卒業後の就職率が高い教育制度です。裏を返せば、プログラムが開講されるかは業界のニーズ次第なので、今あるプログラムがこの先もずっとあるかはわからない面もあります。
また、入学者の選抜にも特徴があり、学校側の裁量が大きいように感じました。先ほど、入学の際に求められる必要資格・事前知識があると書きましたが、実はこれらの要件を満たさない人でも入学は可能です。これまでの職歴や趣味などを通じて、必要資格や事前知識に相当する実際の能力(reell kompetens)を身につけていると学校側から認められれば、要件を満たしていなくても例外措置として合格の可能性があるのです。このような能力は、学校が独自に行う試験や面接、受験者が提出した資格証明書、在職証明書、personligt brevなどをもとに、学校側が評価を行います。
私の場合も、プログラミング授業の受講経験が必要だったとあるIT系のYHに出願するとき、「プログラミング授業は受けたことないけど、前職やプライベートでウェブサイトをいじった経験があり、JavaScriptの基本的なところはわかります。あと授業開始に備え◯◯や◯◯という有料オンラインコースでプログラミング自習してます。だから絶対授業についていけます!」という趣旨のpersonligt brevを送ったらreell kompetensとして認められたことがありますので、使えそうな経歴があればとりあえず書いてみてもよいと思います。ただ当然ながらあまりに内容が的外れだと逆効果だと思いますが。
手に職もない潰しのきかない学歴・職歴持ちの決して若くない移民の私にとって、教育を受け直して手に職をつけつつ業界とのつながりを作ることが、遠回りに見えて一番の就職への近道と思っています。最初は大学進学を考えていてYHについてはそんなに調べていなかったのですが、大学の出願締切直前になって、志望している大学のプログラムに入っちゃうと卒業まで最低でも3年かかるし就職まで長いよなあ…と心が揺れてきました。悩んでるうちにYHの出願締切も過ぎてしまったものの、追加募集をちょこちょこチェックしてたらたまたま今のプログラムを含め複数のYHプログラムが募集してるのを見つけ、今しかないと思って出願したのでした。うーん今思い出しても急展開の行き当たりばったり。でも、走り始めたからには精一杯やって完走したいと思います。